帰り道

君は僕を置いて出ていった。荷物も持たず。なんて身勝手なんだろう。まったく、迎えに行かないとななんて思っていた。携帯に電話をかけた。解約されていた。え?出ていったってなんだっけ。僕たちって喧嘩でもしたっけ。冷静に考える。冷静になんてなれないけど無理やり、ね。きっと僕は捨てられたんだ。家に帰って来ると少しだけ感じた君の残り香。唐突すぎて涙も出ない。ああ、こんなに空が茜色できれいなのに。僕の感情は追いついて来てない。いや、追い越されたのかな。涙も置いて来たのかもしれない。まだ、家の中、暖かいな。さっきまで君はそこにいたんだね。もう君の声を聞くことも、君の姿を見ることも、君に触れることもできないんだね。なんてダメな人間だ僕は。いなくなって初めて君への気持ちがわかる。ああ、もうどんなに手を伸ばしても君には届かない。こんなに茜指す天つ空が綺麗なのに、僕の心は動かない。